ビールの種類のことを「ビアスタイル」と言います。原材料や酵母の種類などによって100以上のタイプがあり、色・香り・味わい・アルコール度数も様々。そんな中からビールを選ぶ時に知っておきたいのは「エール」と「ラガー」という代表的な2つのタイプです。 使う酵母で発酵の仕方が変わり、味わいに変化をもたらします。まずはエールとラガーの違いと特徴をお話しします。

エールとは、上面発酵で醸造されるビールの一種です。 大麦麦芽を使用して酵母を高温・短期間で発酵させることにより複雑な香りと深みがありフルーティーな味になるビールのスタイルです。 上面発酵とは、やや高温(15℃から20℃前後)で発酵し(発酵期間は3〜4日)短い期間で発酵を行うことで炭酸ガスをたくさん出し最終的に酵母が浮かび上面で層を作る発酵のことを言います。(その後は約2週間程度熟成させます) 一般的に上面発酵の方が醸造は容易であるとされていて19世紀以降にラガーが爆発的に普及するまでは、ビールといえばエールビールのことでした。
エールは、通常15〜24℃で発酵します。この温度で酵母は大量のエステルという物質を生成します。それがいわゆるフルーティーな香りを発生させるのです。 例えとしてバナナ、マンゴー、リンゴ、洋ナシ、パイナップル、バナナ、スモモ、またはプルーンのような香りです。 一般的なエールはラガーよりも甘味があり、コクがあります。

ラガーとは、下面発酵で醸造されるビールのスタイルです。 日本におけるビールの分類では「貯蔵工程で熟成させたビール」。 キレのよい苦み、すっきりとしたマイルドな味わいを持つビールです。
下面発酵とは、低温(約10℃)で発酵し、発酵期間は7〜10日と長い期間で発酵を行うことで酵母がタンクの底に沈み下面で層を作ることを言います。その後約1か月間ゆっくり熟成させます。
下面発酵は低温で発酵させるため、生産には冷却機など大規模な設備が必要とされますが、雑菌が繁殖しにくく管理しやすい・大量に生産することが可能であるというメリットがあるため一定の品質を保ったビールを大量に生産するのに向いてることから、ラガーは世界中で普及しました。 現在、日本で流通している大手メーカーのビールの多くがラガーの「ピルスナー」というスタイルです。
元々は、ドイツ・バイエルン地方のローカルビールでした。 この土地は軟水で、硬水でなければ酵母が活動しにくいエールビールを作るのが不向きな土地でしたが軟水でも低温下で活動する酵母の存在に気づき、特殊な製法でビールを醸造するようになったのが始まりです。 秋の終わりにビール樽を洞窟の中で氷と共に貯蔵し、翌年の春に取り出していたそうです。
「貯蔵」=ドイツ語で「ラガー」:Lager。(動詞形ならlagern)されたビールだから「ラガービール」と呼ばれるようになりました。
