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横浜ビールがつくる
クラフトビールとは

「クラフトビール」とは小規模の醸造所で作られるビールのことだというのは、もう周知の事になるほど一昔前からは考えられないほどクラフトビールが身近になってきました。街にも醸造所が多く見られるようになり、スーパーやコンビニにもいろいろなブルワリーのクラフトビールが並んでいます。自由なデザインのラベルが魅力の一つでもあるクラフトビールですが、何よりの魅力は細部まで醸造士の目が届く、つまりクラフトマンシップ(職人魂)が込められたビールであること、また醸造所のある地域と密接に繋がったその土地のビールであること、これが一番の「クラフトビール」の醍醐味ではないでしょうか。私たち横浜ビールが考える「クラフトビール」についてお話いたします。

横浜ビールの原材料について



麦芽(モルト)

麦の種子を発芽させた後に、熱風で乾燥(=焙燥)させます。この工程を製麦と呼びます。濃色ビールの仕込みには焙煎したモルトも合わせて使用します。ビールの色、香り、味わいはこれらのモルトの配合の仕方で変わってきます。横浜ビールは各スタイルに合わせ輸入している麦芽を主に使用しています。横浜ラガーの飲み応えを支えるコク、アルトの赤味かかった色合いと香ばしさ、ハマクロやカカオビールの焦げ感などは焙煎したモルト(クリスタルモルト、カラメルモルト、チョコレートモルト、ブラックモルトなど)によるものです。


ホップ

ビールに苦みや香りをつけるのに欠かせない植物です。ビールの泡の形成や殺菌にも一役かっています。麦汁の煮沸初期段階でビタリングホップを投入し苦味を抽出し、煮沸終了前後にアロマホップを投入し香りを乗せる方法が一般的です。柑橘のような鮮烈な苦味、香りが特徴の横浜ラガーは、ビタリングもアロマもモトエイカーというホップから抽出するシングルホップのビールです。横浜ビールはペレットホップを使用する事が多いのですが、1年に1回だけ横浜市港北区古川原農園産の生ホップ(カスケード、センテニアル)を摘み取りから3時間で手もみして仕込み釜に投入する「超フレッシュホップ製法」によるビールを造っています。また、ここ数年は、ホップの香気成分であるルプリンを効率的に凝縮したCRYO HOPを使用する場面もあります。限定「シャスヤバIPA」はCRYO HOPをドライホッピング(熱の影響を受けない発酵以降の工程でホップを追加する手法)で使用する事で、
クリーンで華やかな香りを醸し出しました。






水道水でも地下水でも、クリーンで安全、安定した水である事が大事です。また、ビール造りにはphコントロールも欠かせません。適正な水の硬度(軟水か硬水か)は造るビールにより違ってきます。一般的に、淡色すっきり系のピルスナーなどには軟水が、味わい深いペールエールや濃色系のダークラガーには硬水が向いていると言われています。横浜ビールには、横浜の水源地「道志村」の湧水を使用して仕込んでいるビールもあります。川下の街でビール造りをするには、川上の村との協力関係が欠かせません。


酵母(イースト)

ビールのスタイルによりエール酵母(上面発酵酵母)かラガー酵母(下面発酵酵母)を選択します。エール酵母は高温(15℃~25℃)で発酵する短期熟成の酵母で、ビールに複雑な味わいや香りをもたらします。一方、ラガー酵母は低温(約10℃)で発酵する長期熟成の酵母で、ビールにスッキリしたのど越しをもたらします。横浜ビールのペールエール・ヴァイツェン・アルトはエール酵母のビール(エールビール)です。ピルスナー・横浜ラガーはラガー酵母のビール(ラガービール)となります。それ以外の酵母としては、自然界に存在する野生酵母「ブレタノマイセス」(ブレットとも呼ぶ)や「乳酸菌」もビール造りに使われ、有名なところではベルギーの「ランビック」がそれらの複合的な働きによって造られています。






各種副原料

ビールに奥深い風味や香りを与えたり、色合いを出したり、スッキリ感を出したり、色々な目的で穀類やフルーツ、スパイスなどの副原料を使用する事があります。クラフトビールの大きな魅力である多様性を支える大事な要素です。横浜ウィートに使用している小麦は、横浜市瀬谷区岩﨑農園さんに生産頂いているものです。瀬谷の小麦によりスッキリ感と優しい香りを醸し出しています。また、季節限定ビール「めぐりあいシリーズ」の各種フルーツビールも、地産のフルーツの特長を活かし醸造しているビールです。港北区綱島池谷桃園さんの幻の桃「日月桃」(横浜綱島桃エール)、戸塚区舞岡の舞岡いちご園北見さんの紅ほっぺ(横浜舞岡苺ウィートエール)、小田原市あきさわ園さんの清見オレンジ(小田原オレンジペールエール)、戸塚区平戸の相澤梨園さん他の浜なし(戸塚×下川町 浜なしウィートエール)、道志村の柚子(道志村柚子ヴァイツェン)など、多くの生産者からご提供頂く副原料にお世話になっています。



 
ホップとは?

ホップはビール醸造において必要な4つの原料(麦芽、水、酵母、ホップ)の一つで、重要な役割を担っています。見た目は黄緑色をした丸い植物の実です。手まりのような形の花なので「毬花(まりはな)」と呼ばれています。また、この毬花を割ってみると黄色の粒がぎっしり。その名は「ルプリン」。この粒々がビールに豊かな香りと苦味をもたらします。ホップの種類は100種類以上あります。それぞれのホップの特徴を活かすことで味わいや香りのバリエーションができます。



 



<苦味をつける>
ホップの大きな役割のひとつはビールに〈苦味をつける〉ことです。ルプリンにはα酸(アルファ酸)という成分があり、熱を加えることでイソα酸に変化してビールの苦味となります。つまり、イソα酸の含有量が多いほど、苦味が多いということになります。

<香りをつける>
もうひとつの大きな役割が〈香りをつける〉です。
ホップの品種で香りは変わります。毬花にあるルプリンには香り成分である精油が含まれていて、ホップを複数品種組み合わせて使うことで、柑橘系の香りや花のような香り、青草のような香りなど、さまざまな香りなどバリエーション豊かなビールを作ります。


<泡持ち>
ビールの液面に蓋をすることで酸化を防ぎ味わいを保つ「泡」。ビールの泡持ちをよくするのもホップの役割です。

<殺菌作用>
ホップには殺菌作用もります。この殺菌作用がもたらしたビアスタイルとして、I P A(インディアペールエール)が挙げられるでしょう。I P Aはホップを大量に使用することで殺菌作用を高めたもので、冷蔵技術が発達していない時代でもビールを腐敗させずにイギリスからインドまで船で運ぶことができました。

 

 

苦み付けと香り付けという2つの役割があると上で書きましたが、〈苦味をつける〉ホップを「ビタリングホップ」、〈香りをつける〉ホップを「アロマホップ」と言います。先ほどホップの成分であるルプリンは熱を加えると苦味が出ると書きましたが熱を加える時間も関係し、ビール醸造の工程で麦汁を加熱する際に、ホップを早くから投入し長く煮込むと苦味も増していきます。一方、加熱を終え、最後にホップを投入することで熱を加える時間を短くすると、苦味よりも香りが強調されます。ホップの種類により苦味や香りが異なりますが、苦味や香りの程度を調整する際には、「ビタリングホップ」「アロマホップ」とビール工程に加えるタイミングがとても大事な要素なのです。また煮沸によってホップの香りが飛びやすいので、ホップは基本的にビール工程の煮沸の段階で投入をしますが、「ドライホッピング」というビールの熟成時にホップを投入する方法もあります。主にI P Aといったスタイルで活用され、横浜ビールでも行うことがあります。




 





 

横浜でもホップが採れる?

多くのホップは外国産ですがこの数年国産ホップを使うビールも多くなってきました。実は横浜でもホップが採れるのです!横浜ビールは、毎年夏に農業としてホップ栽培をされている古川原(ふるかわら)農園のホップを使用したビールを造っています。古川原農園は神奈川県横浜市で主に露地野菜と花を栽培していましたが、地域農業に人々の関心が集まることを願い、2016年からホップ栽培を開始。2017年に横浜ビールから「横浜産ホップを使用したクラフトビールで地域を盛り上げたい」と相談を受け、取組みに協力することになりました。現在はカスケードとセンテニアルを育てています。 

 

 

古川原農園(JTFファーム株式会社)は、横浜市港北区各所に約1ヘクタールの畑を持っている農園です。横浜市の北東部に位置する場所で新幹線の「新横浜駅」があるのが港北区です。そんな場所でホップを栽培しているのが古川原農園 代表の古川原 琢(ふるかわら たく)さんです。古川原さんは路地野菜や花を主に栽培していましたが、2016年からホップ栽培を始めました。「横浜産ホップ」の誕生です。そのホップで作ったクラフトビールで地域を盛り上げたい、という想いを知った私たち横浜ビールは2017年から古川原さんと一緒に横浜産ホップのクラフトビール作りを始めました。日本の風土はホップ栽培に向いているとは言い難い、骨の折れる仕事です。


日々勉強をし、工夫をし、農家と醸造所が一緒に連携しビール作りをしています。出来上がったビールを飲んで笑顔になるお客様のことを想像すると、太陽が照る炎天下の中一つひとつ手作業でホップを収穫する大変な作業も苦ではないと古川原さんは言います。横浜ビールの醸造士たちはそのホップの収穫から仕込み釡に投入するまでを3時間以内で終わらす「超フレッシュホップ製法」で仕込みます。そしてできたのが、「横浜港北フレッシュホップエール」です。多くのボランティアスタッフの皆様の協力もいただいて実現する横浜産ホップのクラフトビール。2020年はホップの品質向上のために2点改善を行いました。一つ目は、ホップ棚の改良です。棚の高さを昨年より上げて、日当たりと風通しを良くしました。二つ目は、施肥(肥料を与えること)の量とタイミングの見直しです。ホップ栽培に関する論文や技術書を読み込んで、ホップの生育を見ながら肥料を与え生長を促しました。ルプリンの量と香りが強く感じられるのが同農園のホップの特徴です。